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ファクタリングを使うと銀行融資が通らなくなる、は本当か?

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「ファクタリングを一度使うと、もう銀行からは借りられなくなるんですか」。資金繰りコンサルの相談で、最も頻繁に聞かれる質問のひとつです。インターネットで検索すれば「ファクタリングは銀行融資に悪影響」「銀行員に嫌われる」といった見出しが並ぶ一方で、「経済産業省も推奨する正当な資金調達手段だから問題ない」という記事も出てくる。読めば読むほど、何が本当なのか分からなくなる。それが多くの経営者の本音だと思います。

はじめまして、藤田 浩平と申します。信用調査会社で4年、大手ファクタリング会社で8年、業界の内側に身を置いてきました。営業と審査の両方を経験し、独立後は中小企業の資金繰りコンサルタントとして3年活動しています。

業界の中にいた人間として正直に言いますが、この問いに対する答えは単純な「YES」でも「NO」でもありません。結論から言うと、ファクタリングを使ったというだけで自動的に銀行融資が止まることはない。ただし、使い方を間違えれば確実に銀行の評価を下げる要素にはなります。本記事では「どんな使い方がアウトで、どんな使い方ならセーフなのか」を、業界の実態と銀行員の本音の両方から解き明かしていきます。資金繰りの選択肢としてファクタリングを検討している経営者の方は、ぜひ最後まで読んでください。

結論:「ファクタリングを使うと融資が通らない」は半分正しい

最初にこの記事の結論を整理しておきます。読者の方が一番気になっている部分のはずです。

信用情報機関にファクタリング履歴は載らない

ファクタリングは「売掛債権の売買契約」であり、借入ではありません。したがって、CIC、JICC、KSC(全国銀行個人信用情報センター)といった信用情報機関には、ファクタリング利用の履歴が登録されません。

これは銀行の融資審査において重要なポイントです。融資審査の入口で行われる信用情報照会の段階では、「この経営者は過去にファクタリングを使った」という情報は出てこない。つまり、ファクタリングを利用したという事実そのものが、自動的に審査否決の理由になることはないということです。

経済産業省・中小企業庁は売掛債権活用を推奨している

そもそもファクタリングは、国が公式に後押ししている資金調達手段です。中小企業庁は不動産担保に過度に依存しない資金調達の選択肢として、売掛債権の活用を推進する施策を続けてきました。

2020年の民法改正では、譲渡制限特約付き債権の譲渡が原則として認められるようになり、ファクタリングを含む売掛債権を使った資金調達の法的環境はむしろ整備されてきています。「ファクタリング=怪しい資金調達」という時代の感覚で銀行員が機械的に嫌うか、というと、実はそうでもないのです。

それでも「銀行はまったく気にしないか」と聞かれれば、答えはノー

ここからが本題です。信用情報には載らない、国も推奨している。それでも、銀行融資の現場では「ファクタリングを使っている形跡」は確実にチェックされます。

なぜか。銀行員は決算書を読んで、その会社のキャッシュフローと資金繰りの実態を読み解こうとするからです。ファクタリング利用は決算書の数字に痕跡を残します。その痕跡が銀行員の目に止まったとき、追加質問が来るのか、評価が下がるのか、それとも見過ごされるのか。それは「使い方」と「決算書への現れ方」によって変わります。

資金繰りは会社の血流と同じで、一度詰まると数字が黒字でも倒れます。ファクタリングは血流を一時的に確保する止血剤としては優秀ですが、止血剤を打ち続けていれば医師(銀行員)は当然「この患者は何か悪いところがあるのでは」と疑います。これがファクタリングと銀行融資の本質的な関係です。

銀行員はどこを見てファクタリング利用を察知するのか

「信用情報に載らないなら、銀行にバレないのでは」と考える経営者の方もいます。これは甘い認識です。銀行員は決算書を読み込むプロであり、ファクタリング利用の痕跡はいくつかの場所に現れます。

売掛金回転期間の不自然な短縮

最も分かりやすい兆候が、売掛金回転期間の変化です。売掛金回転期間とは、売上に対して売掛金がどれくらいの期間で回収されているかを示す指標で、計算式は「売掛金 ÷ 売上高 × 365日」です。

例えば、年商1.2億円で売掛金が2,000万円の建設業の会社があったとします。この場合の売掛金回転期間はおよそ61日です。建設業界の平均的な支払サイトを考えると妥当な数字でしょう。

ところが翌年、売上規模は変わらないのに売掛金が500万円まで減っていたらどうなるか。回転期間は15日に縮まります。事業の実態が変わらないのに数字だけ大きく動けば、銀行員は必ず質問してきます。「この急激な短縮は何ですか」と。回答に窮した経営者が「実は期末にファクタリングで売掛金を現金化していまして」と打ち明ける場面を、私は何度も見てきました。

営業外費用に紛れた「売上債権売却損」

会計処理上、ファクタリングの手数料は「売上債権売却損」という勘定科目で営業外費用に計上されるのが一般的です。マネーフォワードやfreeeといった会計ソフトの解説記事でも、この処理方法が標準として紹介されています。

問題は、銀行員がこの勘定科目を熟知しているという点です。決算書の損益計算書を見て、営業外費用の中に「売上債権売却損」や「債権譲渡損」「割引料」といった項目が一定額計上されていれば、ファクタリングを使った可能性が高いと推測されます。

科目名を「雑損失」に紛れさせている会社もありますが、銀行員は「営業外費用にしては不自然に大きい雑損失」を見つけたら、必ず内訳を質問してきます。決算書を作る顧問税理士に「ファクタリング手数料は雑損失で処理しておいてください」と頼んでも、隠せるものではないと考えてください。

法務局の債権譲渡登記

3社間ファクタリングだけでなく、2社間ファクタリングでも債権譲渡登記が必要なケースがあります。債権譲渡登記は法務局で行う公的な登記で、誰でも閲覧可能です。

銀行員は融資審査の過程で、申込企業の登記情報を必ず確認します。商業登記だけでなく、債権譲渡登記の有無も調査対象です。登記情報の中に「譲受人:◯◯ファクタリング株式会社」といった記載があれば、ファクタリング利用の事実は完全に把握されます。

私が業界にいた頃、登記不要型のファクタリングを希望する利用者は多かったですが、それは多くの場合「銀行にバレたくない」という動機でした。一方で、登記不要型は手数料が割高になる傾向があり、結局のところ「銀行に隠したい代償」を払う構造になっていました。

元銀行員に聞いた率直な反応

独立後、地方銀行・信用金庫の融資担当だった方々と話す機会が何度かありました。ファクタリング利用企業に対する率直な感想は、おおむね以下のようなものでした。

  • 1回や2回のスポット利用なら、合理的な理由があれば気にしない
  • 半年に複数回、または毎期計上されていれば「資金繰りに恒常的な問題あり」と判断する
  • 手数料水準が相場から外れて高ければ「悪質業者に捕まっている」と見る
  • 経営者が説明を求めても歯切れが悪ければ、信頼性そのものを疑う

「ファクタリングを使ったから貸さない」のではなく、「ファクタリングの使い方から推測される財務状態と経営姿勢」が評価対象になる。これが現場の本音だと理解してください。

ファクタリングが銀行融資にネガティブに働く5つのパターン

ここから踏み込んで、銀行融資の評価を実際に下げる「悪い使い方」を5つに分類して解説します。自社の使い方が当てはまっていないかチェックしてみてください。

パターン1 手数料計上で経常利益が圧迫される

ファクタリングの手数料相場は、2社間で売掛金額の8〜18%、3社間で2〜9%が目安です。仮に毎月500万円の売掛金を2社間ファクタリングで現金化し、手数料15%を払い続けたとしましょう。年間の手数料負担は900万円になります。

この900万円は損益計算書上、営業外費用に計上され、経常利益を直接的に圧迫します。本業の営業利益が1,200万円あっても、経常利益は300万円まで圧縮される。銀行は融資判断において経常利益を重視しますから、「経常利益率の低い会社」として評価が下がります。

業界の中にいた人間として正直に言いますが、ファクタリングを継続的に使う企業の決算書を見ると、本業はそこそこ儲かっているのに経常利益がスカスカというパターンが目立ちました。営業外費用に消えていく手数料の重さに、経営者自身が無自覚なケースが多いのです。

パターン2 継続利用で「資金繰りに窮した会社」と見られる

銀行員が最も嫌うのが、ファクタリングの常用です。

スポット利用、つまり「大型案件の入金待ちで一時的にキャッシュが必要だった」「特殊な事情で売掛金回収が遅れた」といった単発の理由なら、銀行員も納得します。むしろ「資金繰りに対する経営者の感度が高い」と評価する銀行員もいるくらいです。

しかし、毎月のようにファクタリングを使っている、半年に4〜5回利用している、複数のファクタリング会社と取引している。こうしたパターンが決算書から読み取れると、銀行員は「この会社は本業のキャッシュフローで運転資金が回せていない」と判断します。

ファクタリングはあくまで止血剤であって、根本治療ではありません。止血剤を打ち続けている会社に、銀行が「では数千万円の長期融資を出しましょう」となるはずがないのです。

パターン3 3社間ファクタリングで取引先にも波及する

3社間ファクタリングは2社間に比べて手数料が安いというメリットがあります。しかし、デメリットも大きい。取引先(売掛先)にファクタリング利用の事実が伝わるという点です。

取引先の経理担当者が「いつもの振込先と違う、ファクタリング会社からの請求が来た」と気付いたとき、その情報は社内で共有されます。場合によっては「あの会社、資金繰りが厳しいらしい」という噂が業界内に流れる可能性もあります。

現場でよくあったのが、3社間ファクタリングをきっかけに取引縮小や新規発注の見送りが起きるケースです。取引先からの信用低下は、最終的に売上減少につながり、その情報は次の銀行融資審査でも不利に働きます。取引先からの不信感は、銀行の不信感より先に経営を蝕んでくると考えてください。

パターン4 高額手数料の悪質業者を使っている

決算書を見れば、利用したファクタリング業者の手数料水準もある程度推測できます。売却した売掛金額と計上された売上債権売却損を比較すれば、おおよその手数料率が逆算できるからです。

健全な業者なら2社間で8〜18%、3社間で2〜9%に収まります。これが20%、30%、ましてや40%を超えるような水準だと、銀行員は「悪質業者を使っている=経営者の判断力に疑問あり」と評価します。

金融庁が公表しているファクタリングの利用に関する注意喚起でも、異常に高い手数料は違法な貸付の特徴として明示されています。銀行員もこの注意喚起を熟知していますから、相場から外れた手数料を払い続けている会社の経営判断は厳しく見られます。

パターン5 銀行に説明できない使い方をしている

最後に、これが一番大きい要素です。銀行員に「なぜファクタリングを使ったのですか」と聞かれたときに、明確に答えられない経営者は信頼を失います。

「いや、何となく資金が足りなくて」「ネットで見て便利そうだったので」といった回答は最悪です。逆に「◯月末に△△工事の入金予定が当初6月末から8月末に2ヶ月遅延し、その間の協力会社への支払いをカバーするために、××銀行の短期融資と並行して2社間ファクタリングを利用しました」と即答できれば、銀行員の印象は大きく変わります。

つまり、ファクタリング利用そのものより「利用に対する合理的な説明能力」を銀行員は見ているのです。

影響を最小限に抑えるファクタリングの使い方

では、銀行融資への影響を抑えながらファクタリングを活用するには、どうすればいいか。実務的なポイントを4つ紹介します。

スポット利用にとどめる

最も重要な原則です。ファクタリングは恒常的な運転資金調達手段ではなく、特殊事情下での緊急対応ツールと位置付けてください。

私の経験では、年に1〜2回の単発利用までなら銀行員も合理的な理由として受け止めてくれます。これが年4回を超えると「常用」と判断され、評価が変わってくる印象です。あくまで目安ですが、回数感覚として持っておいてください。

健全な業者・適正手数料を選ぶ

業者選定の段階で、手数料相場の範囲内に収まる業者を選ぶことが大前提です。相場感の参考としては、以下のような目安を意識してください。

契約形態手数料相場特徴
2社間ファクタリング8〜18%取引先に知られない、スピード重視
3社間ファクタリング2〜9%取引先の同意必要、手数料が低い
オンライン完結型5〜12%中間水準、書類完結型で対面なし

これを大きく超える水準を提示してきた業者は、悪質業者の可能性を疑ってください。業者選定や業界全体の動向については、経営者向けに売掛金の活用戦略や業者比較を網羅的に解説しているファクタリングマガジンのコラム一覧が参考になります。基礎知識から実践的な業者選定まで体系的に整理されているので、契約前の情報収集に役立つはずです。

会計処理を正しく行う

ファクタリングの手数料は、原則として「売上債権売却損」として営業外費用に計上します。これを「雑損失」に紛れさせたり、無理に営業費用に混ぜたりすると、税務上・会計上の整合性に問題が出ます。

正しい会計処理を行えば、本業の営業利益にはファクタリング手数料が影響しません。銀行員が見るのは経常利益ですが、営業利益との差分から営業外費用の内訳を推測する流れになるので、隠す意味はありません。透明性のある決算書のほうが、結果的に銀行員の評価は高くなります。

銀行員には隠さず、説明できる材料を持っておく

これは私が独立後、最も多くの経営者にアドバイスしてきたポイントです。ファクタリングを使ったら、その事実と理由を銀行員に積極的に説明できる準備をしておいてください。

具体的には、以下のような材料を揃えておくと有効です。

  • いつ、なぜ利用したかを明記したメモ
  • 並行して銀行融資の打診や交渉を行った記録
  • 利用後に資金繰りがどう改善したかの実績
  • 翌期以降の利用予定(基本的に「予定なし」と言える状態が望ましい)

聞かれてから慌てて取り繕うのではなく、「説明する準備が常にある」状態を作ること。それが銀行員との信頼関係を維持する基本です。

ファクタリングと銀行融資、どう使い分けるべきか

最後に、中長期的な視点でこの2つをどう使い分けるべきか、私の考えをお伝えします。

スピードとコストのトレードオフを理解する

銀行融資とファクタリングは、そもそも性格の異なる資金調達手段です。両者の特性を整理すると以下のようになります。

項目銀行融資ファクタリング
調達スピード数週間〜1ヶ月即日〜数日
コスト年利1〜5%程度手数料2〜18%
審査対象自社の財務状況売掛先の信用力
担保不動産・保証人など売掛債権のみ
信用情報への影響ありなし

スピードを取るならファクタリング、コストを取るなら銀行融資。この基本的なトレードオフを理解した上で、その時々の経営状況に応じて使い分けるのが正解です。

銀行融資の代替ではなく「補完」と捉える

ファクタリングを「銀行融資の代わり」と考えている経営者は、長期的に苦しくなります。銀行融資が断られたからファクタリング、また断られたからまたファクタリング、という流れは、止血剤の連打で根本治療を後回しにする発想です。

そうではなく、銀行融資を主軸の資金調達手段としつつ、銀行融資の実行までのつなぎや、特殊事情下での緊急対応として、ファクタリングを補完的に使う。この位置付けが健全だと考えてください。

並行して銀行融資が通る財務体質を整える

最終的に経営者がやるべきことは、ファクタリングに頼らずに済む財務体質を作ることです。具体的には、以下のような取り組みです。

  • 売掛金回収サイトの短縮交渉
  • 取引先の支払条件見直し
  • 過剰在庫の圧縮
  • 経常利益率の改善
  • 自己資本比率の向上

これらを地道に積み上げていけば、銀行融資の枠は徐々に広がり、ファクタリングの必要性自体が減っていきます。資金繰り表を毎月更新し、3ヶ月先のキャッシュフローを常に把握しておけば、緊急のファクタリング利用に追い込まれる場面も減るはずです。

中小企業の資金調達環境については、国や業界団体が継続的に情報発信や支援策を打ち出しています。融資制度や信用保証協会の保証付き融資、補助金など、自社が活用できる選択肢がないか、中小企業庁の公式サイトや顧問税理士から定期的にキャッチアップしておくことをおすすめします。

まとめ

「ファクタリングを使うと銀行融資が通らなくなる」は、半分正しく、半分間違っています。

正確に表現するなら、こうなります。ファクタリングを使ったという事実だけで自動的に銀行融資が止まることはありません。信用情報にも載らず、国も推奨する正当な資金調達手段です。しかし、継続的・常用的に使えば、決算書の数字から銀行員に察知され、「資金繰りに恒常的な問題を抱える会社」と評価されます。高額手数料の悪質業者を使っていれば、経営判断力そのものを疑われます。

一方で、スポット利用にとどめ、健全な業者を選び、銀行員に対して合理的な説明ができる状態を維持すれば、ファクタリング利用が銀行融資の重大な障害になることはありません。

業界の中にいた人間として最後にお伝えしたいのは、銀行員が見ているのは「ファクタリングを使ったか否か」ではなく「その経営者が資金繰りをどうコントロールしているか」だということです。ファクタリングは止血剤として優秀なツールですが、根本治療の代わりにはなりません。本業のキャッシュフローを健全化し、銀行融資が通る財務体質を地道に作る。その上で、緊急時の選択肢としてファクタリングを補完的に使う。この姿勢こそが、銀行融資にもファクタリングにも信頼される経営者の姿だと思います。

資金繰りに不安を感じている方は、ファクタリング業者選びを急ぐ前に、まず自社の決算書と資金繰り表を冷静に見直してみてください。一社のファクタリング業者の提案だけで判断せず、複数業者から相見積もりを取り、可能であれば顧問税理士や中小企業診断士など信頼できる第三者の意見も聞いた上で判断することをおすすめします。